メルヘン


ところで私と一緒に吊り橋で揺れませんか?



ものすっげぇ好きな男がいまして、
呪いの紙人形みたいな薄っぺらい、人生のどこかに花を置き忘れてきたような外見と、
熱血でも稀薄でもなくアルデンテな芯の一本残る性格が
格別に好きで、

何より一緒にいると超ド級に楽しい。


なのに、だ。


こんなにこんなにクソ楽しいのに、
盆と正月いっぺんに来たみたいなのに、
なのになのに自分でも驚くほど脈がない。

こんなに脈がなくて良いものなのかって救命処置したいくらい、無い。

今日は、そんな彼と私がどのくらい脈が無いかという悲しい話を読んで聴かせます。
心電図は最初から最後までフラット。
そんな彼に私が必死に心臓マッサージをする単調な絵が続くので、うんことか裸とか、はたまた熱く接吻を交わす図とか、もう一切出てきません。

笑いと感動の一大スペクタクルも血も涙も、全然ないドキュメントを一切合切書き綴ります。


ではでは。



私、加藤と 彼、佐藤は アルバムが二冊同じ。

中学と高校。

思春期で多感なこの6年間、私たちはお互いに
からっきし ただの一度もときめかなかった。
6年間絡みなし。
どこにでもいるごく普通の佐藤とごく普通の加藤だった。

しかしその三年後の風の強い春の夜、
私、加藤に明らかな異変が起こる。

佐藤が、素敵な佐藤に見える。
佐藤が、すごくイケテル佐藤に見える。
佐藤(と)がT.SATO!くらいに見える。

加藤にはそう見えた。

何があったとかいう訳ではなかった。
溺れているところを助けられたとか、
雨の日に傘を貸してもらったとか、
そんなトキメキエピソードは無かった。

ただ単に二人で歩きながら喋ってただけだった。
こんなんで恋が生まれるなら、おちおち井戸端会議にも参加できねぇなと怯えるくらい、ありきたり。
でも、ものごっつ楽しかったんだもの!

佐藤がア行からカ行まで読み上げるだけで、
キャーキャー言いながら写真取りまくるパー子のように夢中だったんだもの!

んで、「じゃあねぇー」「またなぁ」って別れたら、
4年に一度のオリンピック決勝女子で突然の肉離れに襲われたような気持ち。
これが、切ないってことなのね!体感です。

もう乙女的に言っちゃえば、『魔法のような夜』でした。


だから私はひらめいたわけ。

この魔法のような夜は、神様あたりがいつもイタイ思いばかりさせてる私にくれた幸せのご褒美なのだと。
つーことはだ、
これはもちろん佐藤にもかかってるに違いない、と。
今ごろ私のことを考えて、その青っちろい頬を染めちゃってるくれてると。


1ヶ月に渡り様子を見た。

この、エアー感あふれる手ごたえ。
(具体的には、致命的なほどの連絡の途絶え。)

えーと。
もしもし神様ですか?
あのさー、例の魔法の件なんだけど、
ピンポイント?
こっちだけかけた?

あ、うん、やっぱし?


佐藤にはかかってないようでした。


マホウのような恋がアホウのような恋だと気づいたときには、もうどっぷり佐藤色の佐藤派。

とりあえずこうなった以上は頑張るしかない。
メールしてみた。

正式に言うと、
さんざんメールしてみた。

丁度ワールドカップだった。
佐藤はサッカーが好きだった。

私はここぞとばかりに
中田のキラーパスがどうだの、
あそこのスペースがどうだの、
トルシエの采配についてだの、
すげぇ専門的な緻密なサッカーメールを送った。

そして良い頃合いに軽く女も出してみた。
出せるうちに出しとけ。


■送信者 加藤
■題名  『ここいらで、一勝負しませんか?』
■内容  よーよー佐藤。次のトルコ戦、点数を予想して賭をしませんか?負けた方が何か一つ言うことを聞くとかどうよ?


■送信者 佐藤
■題名  『Re:ここいらで、一勝負しませんか?』
■内容  てめぇにお願いされても、何にもしてやれねぇ。


見事な戦力外通告ですね。
これも不況のあおりでしょうか?
平和ボケした日本への厳しい投げかけでしょうか?

勝ったらデートに誘いたい打算的な乙女の夢は打ち砕かれました。


そんな身もふたもない態度を頂くたびに、私は新しい恋を求めて彷徨った。
馬鹿らしい、あんなチビ。
馬鹿らしい、あんなシオ顔。
馬鹿らしい、あんなパン屋(実家)。
佐藤のくせに『伊藤パン』ってどういうことだよ?
プライドねぇの?
あんなやつ、もう知らねぇ。


そうやって一時離れてはみても、私と彼は地元が同じ。
遊んでるグループもだいたい同じ。
飲み会の度にお会いする。
他に予定がないのかっつーほど、私と彼は憎いほど皆勤賞。

オーラの薄いチビの佐藤を私はいつもばっちり見つける。
あいつは乙女心を踏みにじった何の後ろめたさも恥ずかしげな様子もなく、気軽に声をかけてくれるから尚、腹が立つ。

『よーバカ』

それが私たちの挨拶。

でもその一言が、古今東西どんな愛の告白よりキュンとするのは紛いもない事実。
私がもしこの先、建国できることができたら、その国のプロポーズの言葉は「よーバカ」にする。
絶対そうする。

そんな脈のない攻防を一年間続けた。
佐藤には彼女はもちろんいない。
でも好きな女がいた。
この数年、私はずっとネクストバッターサークルの中で打順を待っていた。
バットを握りしめて、立て膝付いてしゃがみながら、じっと目をつぶって待っていた。
打順さえ回ってくれば清原くらいは打つ自信があった。

もう一度言う。佐藤君には好きな女がいた。
これまたすげぇ可愛い女だ。
なんつーか知的美人で清潔感っつーか透明感があって、優しくて、高校の時は部活のマネージャーなんかしてた。

私は知的だけど、それが外面にはあんまり現れてないし、
清潔感っつーよりどっちかっつーと生活感派だし、
ましてや透明感なんつー代物は持ち合わせていなかった。
インパクトとか哀愁とかなら少々。

でも佐藤は何年も何年も彼女に告白することができなかった。
そのもどかしさつったら、半端無かった。
喉もと掻きむしるような、髪の毛ぐしゃぐしゃにしちゃいたいような。

その恋が、今年どうにか終わった。

結局、何もできぬまま、不完全燃焼に終わった不甲斐なさを私は今でも本人に目の前に堂々とバカにする。

『おめぇいい加減恋の地図広げろや。植物かっつーの。酸素増やしてる場合かっつーの。』

内心ホッとしたっつーの。
とにかく、アイツの心は解禁になった。
寂しさに紛れて、私がちょこんと隣に座っても全然おかしくない。おかしくない。
むしろ微笑ましい。

つけ込んでいいなら、どこまでだってつけ込みたい。
餅つきの合いの手ぐらい、つけ込みたい。

私は、友達という身分を逆手にとって、食事の約束を取り付けた。

「焼き肉喰おうぜぃ」っつー誘い。
男女で焼き肉なんか囲んじまったら、もうくっつくしかない。
公認だ。

しめしめ。

私はその日を待ちに待った。
実際、首も数ミリ伸びるほど待った。
その週、仕事は半端無くハードで、私は焼き肉だけを気力に生き抜いた。

週末は・・佐藤君と焼き肉・・・
焼き肉だけでは・・終わらないかもしれない夜・・
週末は・・佐藤と・・
佐藤と・・
ああ、佐藤・・

その日が来た。

焼肉の約束を取り付けた日、彼は「んじゃ連絡するよ」と笑顔で言った。
キランと歯茎が光ったくらいの純粋な笑顔だった。
それが、どうもおかしい。
私の携帯ったら約束当日になっても、うんともすんとも言わねぇ。
昼休みに見ても、夕方に見ても鳴らねぇ。
鳴った形跡もねぇ。
私は絶対圏外にならないために、地下という地下をさけて、通勤電車まで変えて、過ごした。

この日のためわざわざ彼の着メロを『焼き肉』ソングに変えた。
にもかかわらず、そのテーマちらりとも奏でられやしない。

そのまま家に帰ってきてしまった。
これはきっと、
『おー加藤、今焼き肉屋にいるんだけど早く来いや!』
っていうダイレクトな電話がくるんだ!
だってまだ六時だ。

シャワーを浴びた。

パックをした。

化粧を直して、服を着替えた。

鞄を選び、靴を磨いた。

マニキュアを塗った。

一息ついた。

それから部屋を掃除した。

風呂を掃除した。

台所のシンクを磨いた。

洗濯物を畳んで、シーツを替えた。

トイレを掃除して、靴箱を掃除した。

それからちょっとテレビを見た。

バラエティーを見て、ニュースを見て、天気予報を見た。

そのままだらだらテレビを見ていると「AV業界で働く女性たち」なんつー妖しい企画の番組になっていて、私は日本が深夜帯に突入したことに気が付いた。

一休さんじゃなくても私はようやく悟らないわけにはいかなかった。
あわてない・・・あわてない・・・。
これは・・・世間で言うドタキャンってやつじゃねーの?
つーかキャンセルの連絡すらねぇ今の状態は、むしろただの「ドタ」じゃねー?

ドタ・・・・。
私はベットに転けた。

結局、携帯が鳴ることは本日一度もなかった。
私は今日一日、片時も携帯を離さずに生活した。
研ぎ澄まされた神経と緊張で、疲れは極限。
私は悩んで悩んでやり切れなくて、メールしてみた。
なるべく気を使わせないようにと心がけ、言葉を選んだ。

『あれ?よくよく考えてみたら、もしかして今日って焼き肉ディだった?加藤』

この人情味溢れるメールに泣け。

よくよく考えなくてもぜってー焼き肉の日だし。
カレンダーに花丸付いてるし。
もしかしなくても焼き肉ディに違いなかった。

でも、万が一、万が一っつーこともある。
したら、メールが来た。

『あーあれはメンバー集まらなかったから中止にした。佐藤』

なんとも突っ込みどころが満載なメールを送ってくれる。
中止にしたっつー連絡がないことも問いつめたいところだけど、それはちょっと置いておいて、
えっとメンバーってなんですか?

そもそも二人で(はぁと)っつー話じゃなかったっけ?
佐藤君と私っつーのが正式メンバーじゃなかったっけ?
いわばスタメンじゃなかったっけ?
むしろその他のメンバーは余計っつーか、サシの勝負、手出し無用じゃなかったけ?
つーかメンバーってなんじゃいっ!!!!

一体こんな気持ちの他にどんなチーム編成があるっつーんだ!!!あーん!!

意気消沈。
私はベッドに倒れ込んだ。
涙がこぼれる前に焼き肉に裏切られた腹がグーグー泣いた。


こういうふうに佐藤は出る杭は打つ派らしく、よく私を凹ませてくれた。
私は佐藤のことが、命と家族と仕事の次に大事。

でも佐藤は、それはそれは長蛇の列のそれはそれは最後尾に近いあたりにぽつんと私がいるような様子らしく、あーん、こっからは佐藤がちっとも見えねぇ。
悟空が修行するために登ったあの塔のてっぺんのよう。

あれを登るためだけに30分ひっぱられて、一週間ひっぱられるのは子供心にテレビ局に直談判したかった。

んで、その列の最後尾でちらっと前の人を確認したら、中学時代の田中くんとかいる。
げーここかよ・・。このレベルかよ・・。
道ですれ違っても一瞬名前思い出せなくて、夕食のときくらいに『あ、田中じゃん』ってハッとするような知り合いレベルじゃん。


正直、馬鹿らしかった。
思わずにはいられないでしょ。

季節は夏で、女で、申し訳ないくらいに20代で、何はともあれ看護師で、これで佐藤さえ手に入ればビンゴで上がりで777(スリーセブン)なのに。

佐藤がイイ位置で止まってくれないから、全部持ち腐れなんだっつーの。

幸せにする力量と、楽しませるプランはもう完璧であるのに。
デートに持って行くお弁当の具まで考えてあるのに。
あとは一回頷いてくれさえすれば、万事解決であるのに。
あがいても、あがいても、びっくりするほど手に入らない。
玄関前で地団駄踏んだら承諾してくれるだろうか。
泣いて足に縋り付いたら、折れてくれるだろうか。


そんなこんなで冬が近づいてきた。

もう飽きた。

ぶっちゃけ飽きたよ片思い。
もうお腹いっぱい。
便秘かよ。
もうそろそろスッキリしてぇ。
告白しちゃおうっと。
んで振られちゃおうっと。

ちょっと気まずくしょぼくれた佐藤の引きつった顔と社交辞令な感じのいかにもなセリフが聞けたら、結構ラッキーじゃねぇ?
二度と見られないぜ?
それをこの恋の餞(はなむけ)にしよう。


地元の飲み会をセッティングした。
帰りに告白しよう。

あいつの手を引いて路地に誘い込んで言おう。
はたまた自転車のうしろに乗っけてもらって風を切りながら言おう。


一週間イマジネーションした。


こくるぞー
こくるぞー
こくるぞー
こくるぞー
こくるぞー


こくらなくてもいいかなあ・・


消耗した。
なんで告らなくちゃいけないんだよ、ばーか。
って八つ当たりしたくなった。


20時に養老乃瀧の飲み会だった。
時計を見たら22時だった。
しかも気づいたら私はネットカフェに居た。

ネカフェでカフェスタSNS)に繋いで、自分のHPに書き込みしてた。


(以下掲示板より)

■タイトル 『南瓜と鼠は揃いました』
■作成者 はいね
■作成日 2003/11/22
魔法かかんないかなあ。
よくさー座ると死ぬ椅子とかさーあるじゃん?
呪われる墓とかあるじゃん?
そういうのがあるんだから、私がいまこの瞬間世界で1番可愛くなったりはしないものかね?
そのへんどーよ?

世界で15番くらいでもいいや。

あ、でも、へたに「世界で」とか言ったからって外人はやめてほしいなあ。
お母さん泣くだろうな。
私はキリマンジャロ人なんて産んだ覚えないよ!

あ、でも世界でってことは人間ですらないかもしれないなあ。
白雪姫の鏡は利口だなあ。

世界で一番美しいもの・・とかアバウトに言われて、黄金比とか出したら、きっと割られてただろうな。

そんなことをツラツラと考えてます。
あー行きたくないなあ。
なぜなら前髪を切りすぎたから。

22時20分。


■タイトル 『漢字が思い出せなくて、何回も書いてると、変に見えてくるよね。』
■作成者 はいね
■作成日 2003/11/22 アクセス数
ストッキングがさー・・・。
もうさー勝負ストッキングを買いたかったわけなの。
ここ一番の。
んでさーストッキングごときに店を梯子して探したわけ。

香水ってさー何個か嗅ぐと何がなんだかわからなくなるじゃん?
みんな注意して!ストッキングもそうだから。

もうさーどれが正解か、どこに向かってたんだか分からなくなった。
もうそのうちちょっとやそっとのストッキングごときじゃ、目に止まらなくなるから。
んでさー
コレ!ってやつを買ったんだけど、
今はいてるんだけど、
なんか・・・。

考えてみたらさ、ストッキングって主役じゃないじゃん?

今回はスカートが主役で、それを引き立たせるストッキングを買うのが当初の目的だったけど、
なんつーか、これは・・
ああああ幽霊になれ。
幽霊になれ。
足消えちゃえ!

でもさー消えないんだよねぇ。
あるんだよねぇ。
はっきりとあるんだよねぇ。

つーかストッキングを探してたはずが、タイツをはいてるんだよねー。
行きたくないなあぁああぁあ・・・。

22時29分。






ばかかな?

さすがに馬鹿らしくなって行きました。
養老の門くぐりました。

『おーひさしぶりー!』

座敷に座りました。


佐藤・・・


佐藤・・いねぇし・・。


これあり?
こんなオチあり?

『あ、あのさー佐藤は?』
聞きました。

『あーなんか来れないってさ』
これがよく言う虫の知らせってやつでしょうか?
ただならぬ予感でもしちゃったのでしょうか?


私は日本酒かっくらいながら佐藤に電話してやった。


プルルルルル  ピコッ


佐藤『おう』

加藤『だぁーれだ(はぁと)』

佐藤『思いっきり着信に出てるけど』

加藤『おめぇ何でいねぇの?』

佐藤『金がない』

加藤『皿でも洗え。嘘、出世払いでいいから来い』

佐藤『今スーパーサッカー見てるからなあ』

加藤『そんなのココであたしが見せてやる』

佐藤『わかった行く』


ヤツが来る。

私は酒を飲んだ。
飲んで飲んで、飲まれて、飲んで。
気づいたらトイレに居た。

コンコン・・コンコン・・

『加藤だいじょぶかー・・?』
佐藤・・の・・声・・だぁ・・
『加藤?』
私は便器に頬を寄せ、まどろんでいた。

ああ、佐藤の声、あたしを心配してくれるドア越しの声。

うっとり。
このまま言っちゃいたい。

『加藤、大丈夫か?』
『佐藤・・す・・す・・・』
『す?』
『酸っぱいものが・・』

恋は万全な体調じゃないとできないものなのね。
私は告白どころじゃなかった。
眩暈と吐き気。

『加藤開けるぞ!』
勇敢に佐藤が突入してきた。

『さ佐藤・・』
『!!!!』

『佐藤?』
『加藤!とりあえず、下はけ!』

助けに来てくれたはずなのに、佐藤はすぐさまドアを閉めた。
なんで・・?
下・・・?

あ、はんけつ、だ。

好きな人にケツを向けてしまいました。
泣きたいです。
初夜もまだなのに。
とんだフライング尻。

ケツはどうにか仕舞って、なだれるようにして店を出ました。


気が付いたら佐藤の自転車に乗って、家に送られていました。

風がとても冷たくて気持ちいいし、佐藤の背中はなんだか温かいし、
よくわからないけど、これはイマジネーション通りだし。

言わなくちゃ言わなくちゃ
言わなくちゃ言わなくちゃ言わなくちゃ言わなくちゃ言わなくちゃ言わなくちゃ言わなくちゃ言わなくちゃ・・

口の中はカツカツで呂律も回らない。
でも伝えたいこの想い!


『あんさー言いたいことがあってぇ』

『何?』

『あんさーもうすっげぇ好きなんですけど、佐藤』

『おう』

『もうさーチョー好きなわけ』

『おう』

『一緒にいると、この上なく超楽しいの』

『楽しんでくれて何より』

『でもさー全然脈がないでしょ』

『ハハッ』

『でもね好きなの・・あ、そこ右!』

『え?』

『バカ違うって!あー右だったのに!んじゃそこ左入って』

『おめぇ言うのが遅いんだよ』

『おめぇのハンドルさばきが鈍くさいんだよ』


ワーワーギャーギャー・・・


気が付いたら朝でした。
家のベットでした。
あれ?告白はどうなったんだっけ?
したよね。
絶対したよね。
し切ったよね。


試しにメールしてみた。


『昨日はありがとう。
 好きだって言ったのは酔ってたからじゃなくて、
 もう本当に大好きなんです。

 そうそう。
 昨日うろおぼえだけど車の免許
 もってるらしいじゃん。

 是非ドライブでも。加藤』


メールが来た。


『昨日は人として当たり前のことをしただけだから礼には及ばんよ。
 こちらもなんか力をもらいましてね、
 いろいろ頑張ろうかという気持ちをいただきましたわ。

 それと俺の運転する車の助手席は
 とても貴い場所なので断固拒否する。佐藤』


諦めるはずが、やっぱり好きで
でもうまくいかなすぎて、月9には向かない。

今度はすげぇ老朽化した吊り橋でも探してきて、デートにでも誘ってみようか。
なんて断られるか、今から楽しみだ。