缶でも蹴ったら戻ってこないような、おっぴろげな青空が憎い夜勤明け。
好きだった男からメールが来たりする。
好きだった?
好きな?
好きだけど?
彼への気持ちを今もどこの棚に整理したらいいんだか、全然わかんない。
それでも保留にされてる人生の事柄はたくさんあって、
例えばずっと行ってない歯医者と虫歯とか、
期日の迫ったレポートが一文字も書かれてないとか、
そろそろ美容院に行きたいなあ・・とか、
そういうのに紛れて存在感を失いつつあった時に、だ。
携帯をauに変えたから登録して下さいとか、そんな業務的な。
飛びつきたくても飛びつけないようなメールが、実に一年ぶり。
どーせ連絡してこないなら、こんなの教える意味なんてあんの?
つーか、それともむしろ連絡が欲しいってこと?
こんなアタシでも電話して下さいってこと?
なになにー?もしかしてホントはちょっと私のこと好きなんじゃねーの?
いやいやいやいやいや。
落ち着け。
そういえば、私、振られたんだった。
わかってる。
わかってる。
でも!
auはね、私もずっと狙っていて、もうすぐauに変える予定だったんだからね!ね!
ってことをどうしてもどうしてもアイツに主張したくて、
メールを返した。
さっそく。
さっぱり返ってこねぇのね。
新品の携帯、きっと片時も離すはずないのね。
だからきっと、やっぱ、
おめぇのことは振ったんだから、境界線越えてくんな、め!
ってことなのかなあ・・。
だったらいっそ、いいよ、じゃあ教えんなよ、余計な恥かかすなよ、おめぇのことに関して私は全く空気が読めないんだから。
いじいじいじいじいじいじいじいじいじいじいじいじいじ・・・
カッキーン!
こういう時は、いやはやバッティングに限るね。
荻窪。
寂れたちっともオシャレじゃないエレベーターに乗り込んで、おもむろに財布から出すバッティング券。
間抜けなストロークをしてくる機械に
女だと思ってなめんな!
(あ、一応、女なんです、そのへんお見知りおきを!)
って感じに安打安打ですよ。
飽きたころには1人で警視庁ゲームですよ。
右に左にタマを避けながら、ときどき「タカ!」とか架空の相棒に目で合図。
あーすっきり。
忘れた頃に、また君からのメールを見つけて。
やっぱり今日もこの荷物をどこに片付けていいのか、皆目見当もわからない。
缶けったって戻ってこないようなおっぴろげなアイツに、
やっぱり缶を蹴り上げるけど、重力は解放されなくて、
おでこにコツンと当たる日々。
せめて同じ天気の下を生きている事を誇りとして生きて行くには、私、貪欲すぎて。