ブラジャーの外し方

いやーあれですね、私ほどの女性になると、世の悩める子羊のような男性たちから日々聞かれるわけですよ。

『加藤さん加藤さん、女性のブラジャーはどうやって外せばいいんですか?』

うむ。

私はね、常々思うんですよ。
かつてこれほどまでに男性たちを喜ばせ、
かつてこれぼどまでに男性たちを悩ませた衣類はあるのかって!



でもね、今わたしはあえて、声を大にして言いたい。

男性諸君、君らの悩みはよぉーく分かった。
痛いほど分かった。

だけどね、はたして、その下着の難解さに悩んでんのは男性だけなのかっつーの。

むしろ私の方が悩んでんじゃねーかっつーの。

つーかおめぇらの73倍悩んでるぞ、っと。
(成人男性が平均5日に一度ブラを脱がすと計算した上で)

ホックなめんな、と。



つーかね、どこのどなたが考えた知りませんがね、そろそろ誰かしらが、声を大にして言っていかないといけないと思うんですよ。

政治の構造改革とかね、それよりも先にまずブラの構造改革を訴えるべきだと思うんですよ。


世の中にはね、「孫の手」って道具があるんですよ。
あれがなぜあるかって、普段届かない背中を掻くためなんですよ。
そんなのは誰しも知ってるわけ。

孫の手=普段届かない背中を掻く

これはもう生きていく上での、決して覆(くつがえ)すことのできない定説(セオリー)でしょ?


なのにだ・・っ!


はーい、みなさんブラジャーに注〜目!

留め金の位置、確〜認!


じゃあ、みなさん大きな声で、ブラジャーの留め金がどこに付いてるか言ってみましょー。

せーの!



背中です・・・。


こ・・こんなことが、平然と行われていたなんて・・・。


ここに届くぐらいなら、孫の手いらねーよ!と。


ここに届くぐらいなら、ヨガ必要ねーよ!と。



むしろブラジャーに悩まされてきたのは、男性ではなく女性なのです。
今こそ、女性たちは立ち上がるべきなんです。
ブラジャーなんてそうそうエレガントに付けられねぇよ、と。



ちなみに女性歴苦節24年の私は、前でホックを留めてクルクルッと回す派です。
この方法だと、まぁ私くらいのセミプロになれば1秒半でブラ装着完了。

なんの問題も無い。


したっけ、この前、温泉旅行で、友達に

『加藤、そのブラの付け方、いい加減やばくね?』

『男の前でも、そんな付け方してんの?』

って言われてました。



もうね、その時のショックつったら、もうっ!
ショックで胸が何カップか凹んだかんね。

そして同時に恥ずかしさも込み上げてきました。

周りの女性たちは、さも背中に目があるがごとく優雅に付けてるんですよ、ブラを。
それがエレガントであればあるほど、世の男に愛されましたってことを雄弁と語るように。


『べっ、別に女だけなんだから、どう付けたっていいじゃん!』


必死の弁明でした。
あの時の私!思い出したくない!

さも、男の前ではちゃんと付けてるわよ的な発言。
でも、生まれて一度だって、男の前でブラジャー付けるようなイベントに立ち会ったことのない私に、ブラをどう付けるかなんて概念、あるわけないじゃないっ!





家に帰って、ブラを眺めながら思いました。

確かに。

ブラのホックを前で付けると、楽だけど・・その間、無防備な背中には無惨にもブラがあるわけで・・、

背中にブラが付いちゃってるわけで・・、

それをクルクルっと回す様は、生活感漂う団地の主婦の裏技のようで・・、

父さん・・父さん・・やっぱその図は、エレガントとは言えないわけで・・・。



いや、でも、これがエレガントに後ろで付けられるようになれば、私も一人前のレディーだ。

レディーになるんだ!





っと、励んだ数分後、

生まれて初めての場所が攣(つ)りました。




鏡の前で、痛てぇ痛てぇ悶える半乳の私は、ハーレクイーンからも
月9からも昼メロからも見放された女の中の女だった。


そう、誰もがそれを乗り越えて優雅にブラジャーを付けたり外したりするのです。

だから男性はちょっとくらいブラの外し方に悩んでくれたほうが、女性はきっと嬉しい。