凄い男

クラスの中でも、そんなに目立たない子だったんです。
まさか、そんなことをする子じゃないと思ってました。


地元の石橋くんはキックボクシングの選手らしい。


え?石橋君が?石橋ってあの石橋だよねー?

街ですれ違う人、すれ違う人に、道を聞かれる石橋だよね?
生き物係で水槽を洗ってる途中に金魚を流しちゃった石橋だよね?
ドッチボールで当たるときはいつも背中からの石橋だよね?


彼の試合を地元をあげて応援に行きました。


もちろん私だってビデオカメラ持って、我が子の運動会を撮影する母親みたく、もう応援する気まんまんで行ったわけですけどね。

もうね人目もはばからず、大声であいつの名前、呼んでやるつもりだったんですけどね。



あいつのリングネームが、まず「グレイシー1484(石橋)」。


あー・・

そこ行っちゃった・・?

思いっきりグレイシー一族に仲間入りしちゃった?
つーか絶対、入れてもらってないのに、勝手に名前語っちゃった?

やべーんじゃねーの?
おめぇの名前、読み上げられた時点で、結構まわりコソコソ言ってっけど。大丈夫?

片思いの子が友達と、勝手に好きな子の苗字を取って「あたし、妻夫木はいねー!」「あたし窪塚みきー!」とかやってんのは、話が違うんじゃね?

つーか後半、銀行の暗証番号みたくなっちゃってるけど。
もしくは、ちょっとした室町時代の雰囲気持っちゃってるけど。
後悔しないて、10年後も言える?



そんな空気が、地元をまったりとくるみまして、
思いの外、大人数でゾロゾロと応援に行ったわりに、
全然声が出せずに帰ってきました。


グレイシー1484はと言えば、1ラウンドKO負け。
(勝ったトコ見たことねぇ・・)
「三途の川に希望の石橋かけてきてやった!」そうです。

三途の川にかけちゃ、行きやすくなって駄目なんじゃね?ってのが地元みんなの意見です。