こっから先は一歩たりともクリスマス!

あれ?クリスマス、何か痩せた?
大丈夫?ちゃんと食べてる?
先生―、クリスマスが吐きそうって言ってまぁーす!
電車やバスでクリスマスを見かけたら、席を譲ってあげましょう!


ここ数年、クリスマス、弱くなった気がする。むかしの勢いがない。
私が強くなったのかもしれない。

34年も、クリスマスやら誕生日やら友達の結婚やらを食らってたら、
平日のクリスマスくらいは、やり過ごせるようになった気がする。

むしろ、平日に来ちゃってるクリスマスを可哀想に思うくらい。

いや、おまえ、いくらなんでも水・木に来ちゃだめだよ。そりゃ、こういう感じになるよー。
週のど真ん中だからね。会社あるし、会議とかあるし。


って、今年のクリスマスをバカにしてたせいかなー。しくしく。



メリークリスマス!!イブにふて寝して、夕方起きたら、完全に ものもらい 出来てたんですけどねー。

まさかねー、この日に ものもらうとは。確実にサンタがね来てた。顔面に。

おととしはねー、確かノロウイルスをもらったんですけどねー。
くれるねー。

ほんと、23日あたりから今まで、誰とも接触を図ってない状況下での、まさかのものもらいですよ。プレゼントがね、黄色ブドウ球菌

もーね、欲しいと思ってたー。
今年のマストアイテムだと。右目あたりにあしらったら、さぞトレンディーだと。


で、まあ、鏡をね見るよね。
私もね医療人ですからね、そこは冷静に対処しようと。目薬もあるぞと。目をシャバシャバって洗うやつもあるぞと。

まずは、自己診断。
この感じは十中八九ものもらいだけど、なんつーの、ものもらいのね、本気度を見定めようと。
あっちの出方を見てから、こっちも出方考えようと、鏡をね、見た。


城攻めかな?


そのくらいのガッツがあったよね。ものもらいに。

で、早くも白旗。
なんなら、目をパシャパシャとかが入り込む隙間がなかったからね。

そっちがそうならと、こっちもね104に電話したよね。
まだ見ぬ104のお姉さんにすがった。
すぐ行ける眼科の電話番号をね、泣きながら聞いてた。

クリスマスの街にくり出したくないがために、昨日から2日分の食料を家に買い込んで、仕事まで休みをとって、準備は完璧だったのに、当日まさかのお出かけですよ。

今日だけは!今日だけは!外気に触れたくなかった…!

このイルミネーションの下、どっかじゃワイングラスがチンチン鳴っちゃって、何らかの小さな箱がパカパカ開いたり閉まったり、
そこに輝く何らかのリング的なものをね「君に」とか言われちゃって、貰っちゃって、買って貰っちゃって「わぁ〜素敵〜」なんて女性たちがね蠢く街をね、
私なんて ものもらいを貰っちゃって、もの貰っちゃって、10カラットくらいのものもらいを顔面に戴いちゃって、「わぁ〜ぴったり〜」なんつって、このイルミネーションの下を、眼科を探して彷徨ってるわけです。LEDが目にしみる。


で、やっと電話で聞いた住所らへんに病院を発見して、駆け込みましたよ。サザエさんのエンディングくらいの勢いで。

もうね、いくらなんでも、飛び込んだ時点で、何か変だなって感じはしてた。

でも、間違いなく病院だし、「電話した加藤ですけど」つったら、「じゃあ、こちらの問診票に」なんつって、やっぱ間違いなく病院だし、

近くのソファーに座って、問診に適確に答えたわけです。もうね、何でも聞いてくれと。いつから、どういう症状があって、とかね、全然聞いて欲しい。ズバッとね答えていくよ。

って思ったんですけど、なんつーかな、ものもらいのせいでコンタクトをつけて来なかった私もいけないんですけどね、あれほどね口酸っぱく「眼科」つったわけです、104のお姉さんに。ものもらいが出来ちゃったから、中野区にある眼科の電話番号を教えて欲しいと。

お姉さん、ここね、まさかの産科なんですけど。

問診票の内容がね、すごいことになっちゃってんですけど。
最後に来た生理日とかね、命からがら答えましたけど、あの、性交渉した日とかね、もう、ペンがね、震えたよね。その交渉に参加したことはね、ないわけです。築34年の私の下半身あたりに、そういったオファーはね、無かったわけです。

私はね、ただ、ちょっとだけ、右目にものもらいがね、できちゃったわけで。
できちゃったの畑違いがエライことになってるわけです。

なのにもう、質問の勢いはね、止まらないわけです。とどまる事を知らないわけです。
隙あらば、複数の異性との交渉とかをね、聞いてくるわけです。複数と交渉とか、もうちょっとしたネゴシエーター扱い。

こっちとしては複数どころか単数もままならなくて、ちょっとした虚数みたいな感じになってるわけです。

だけども何の因果か私もね何らかのものをね、右目付近に授かっちゃったわけです。でも明らかに、ここでは、産み落とせないな、と。問診票から言って、目とかね、全然フィーチャーされてないし。

で、まあ、ちょっとまごつきながらも、受付のお姉さんに、
「えっと、ちょっと勘違いしてたみたいで…」
みたいなことを述べてね、問診票返して出てきたわけですが、ほんと、今思うに、なんで返したんだろう。
思いっきり最初の一問以外、筆の止まった一枚を。なんで生理のとこだけ答えて帰ってきたんだろう。

とんだ場所で一問一答してきたわけで。

クリスマスに産科で、今年こそ処女がキリスト産むかと思った。
その科には、今生で辿り着けるかもあやしいなって思ってたのに、辿り着いたなあ。


で、まあ、産科から眼科へ いざ!って気持ちにもなれなくて、トボつきながら薬局に行った。
とりあえず、明日の仕事のために眼帯を買おうと思って。

したら、なんかもう薬局が凄い感じになってる。きらめいてる。
なんかカップルとかがね、超いる。
「今宵限りのクリスマスフェア!」とかやってて、店前でちょっとケーキ売ったりしてる。

クリスマスの力がすげぇよ。
平日だからとか、あなどってごめんね。

で、まぁレジでカップルとカップルに挟まれたり揉まれながら、どうにか、「が、眼帯、ください」つって、眼帯買ったんですけど、レジの人が完全にサンタの格好で、「メリークリスマス!」つって、眼帯くれたんですけど、

メリーではね、少なくともないです。今現在。
眼帯を買ってる時点でね、正直、1ミリもメリーが入り込む隙はねぇよ。

で、ヨボヨボになりながら、家に辿り着いて、眼帯の袋を開けたら、ネクタイだった。


奇跡っ!!


このタイミングで舞い降りちゃったよ、奇跡が。
雑だよ〜、雑だよ〜。舞い降り方が雑だよ〜。
とりあえず1回舞い降りとけみたいな感じだよ。


もう、薬局が手、広げすぎだよ。その手に、私が全然入ってないよ。

「黒と白がありますけど」って聞かれて、「眼帯に?」とは思ってたけど。黒とか、伊達正宗くらいしか需要がないんじゃない?って思ったけど。

まさかのネクタイだった。

で、もう、ただただ、握りしめるばかりなんですが、今となっては、もうそのネクタイをヌンチャクみたいにして暴れたよね。

無駄じゃなかったと思いたい一心で。
私なりのブルース・リーで、クリスマスに向かって戦いを挑んだよね。

限界などない。そこに留まってはいけない。それを越えて行くのだ!(ってブルース・リーも言ってたし)

戦うのだ、クリスマスと。

玄関のクリスマスと、冷蔵庫の中のクリスマスと、枕の下のクリスマスと、テレビの中のクリスマスと、タンスの底のクリスマスと、鏡に映るクリスマスと、全てのクリスマスに、戦いを挑んだこのワンルームに朝日が射す頃には、私の手の中には圧倒的な勝利しかない。

だから、みんなもどうか、今日を乗り切るんだ!この数時間を。

どんなに劣勢でも、クリスマスは、絶対に終わる。終わらないクリスマスはないんだ!