結婚式には呼んでね!
なんつって冷やかしてたカップルが、ほんとに結婚することになってた。
やー、ほんともう、山とか谷とかね、もっとあっていいんじゃないの?
で、まぁ御招待にあずかったんですけど、
あれ、なんだろう、この開催地の有り得ない画数。文字化け?
あ、これ、中国だ。
中国ってる。
わー、中国かー。
中国かぁ。
あー・・・うわー・・・何だろうこの倦怠感。
一瞬にして、中国に行く自分を想像したときの、やるせなさ。
パスポートって・・・あ、実家だ。
実家っつーか、えっと、期限って・・・。
ばっちし切れてました。
ぶっちぎり。
完全に何らかの醤油とか飛んでたし。風味抜群。
えっと、パスポート取り直すには・・区役所行って戸籍・・・で・・
えっと、その後、都庁とか行って・・
あぁ都庁も区役所も土日やってないんですっけ・・えっと・・・
写真は・・・縦4.5cm横3.5cm・・・だっけ
・・・ハンコとか、最近めったに出くわしてないような・・・
うわぁああぁぁあぁあぁあぁあぁぁあぁあぁあぁああぁ
吸い込まれる。吸い込まれる。
いま、もう、なんか、すごいダークサイドに堕ちそうになったわー。
大切な友達の結婚式。
大切な友達の結婚式。
大切な友達の結婚式。
呪文を唱える間に、流れるように時は過ぎてまして、
何かよくわかんないけど大きな課題を抱えてる気になって、
背中に十字架背負ってる気満々だったんですけど、
気づいたら何ら微動だにせず毎日を楽しく過ごしてまして、
ほんと、つるっと一ヶ月くらいたってて、
「もうさ、来なくてもいいから、はっきりしてくんない?」
っつー友達からの警告がめっちゃ怖くて、
「行くよ!行くに決まってる!
半身 もう行ってると言っても過言では!」
なんつって、あの日あの時、断っておけば良かった。
それから数週間、ネットでパスポートの取り方とか調べて、
ちょれーちょれー
なんつって、ほんと、もう、その日受け取れる気でいました。
やっと辿り着いたパスポートセンターのカウンターで、
どーよ!とばかりに品々を見せたんですけど、
これがドラクエやFFなら軽くダンジョンの扉開いちゃうんじゃないの?
っつーくらいの戦利品を見せ付けたんですけど、
なんかどうやら、パスポートね、今日貰えないようなムードを
おっさんがヒシヒシと出してくるので、
「えっと、来週行くんですけど!」
みたいな、アタシ急いでるんですけど!的な雰囲気を
バシバシ出してみたんですけど・・
いや、A型にしてはよく出した方っていうか、
出し切ったと言ってもいいくらいのプレッシャーをかけてみたんですけど、
あ、え、後日ハガキが届くそうです。
そのはがき持って、もう一回ここ来るのが必要だそうです。
あ、一週間くらいかかるんですか?
えっと来週・・あたし・・
「決まりですから」
おっさんの後ろに、国家が見えた気がした。
もー、その時点で、他の友達たちとは、
一緒に行けないような雰囲気になってきまして、
いや、正直、「待ってて」「一緒に行きたい」って言葉が、
このへんまで出てましたし、
なんなら「行けなくなった」っつー言葉も、
ほんとゲロっと出ちゃいそうなくらいの不安に襲われたんですけど、
なにゆえ26歳、みたいなとこ、あるじゃないですか、自分。
結構ね、大人としてね、扱われ始めてる。
よくわかんないけど、みんな、私が来れると思ってる。
中国で待ち合わせできる感じで話が進んでる。
思い出して!
私が渋谷にすら辿り着けなかったコトを!
「渋谷のハチ公前ね!」って言われて
渋谷の八個前の大塚の駅で待ってたこと。
「いまどこ?」
「大塚についてるよ?」
「え?渋谷のハチ公前って言ったよね」
「うん、八個前にいるよ」
「渋谷だよ?」
「うん、渋谷の八個前」
「ハチ公前?」
「うん、八個前」
あの時は、笑って済んだけど、
舞台を中国に移したら、スケールもだいぶ変わってくるんじゃないかな。
次に「大日本人」て映画のメガホンを取るのは、私かもしれないよ。
って、ずっとテレパシーで訴えてたんですけど、
「成都で待ち合わせ」になりました。
強く願えば叶うって言ってたの誰ですっけ?
この時の願いの強さつったら、頭の上あたりに元気玉できててもいいくらいだったんですけど。
「成都で待ち合わせ」
「オーケー」
なんつって、電話を切った後、
もうね、身体がブルブル震えてくるの。
怖くて。恐怖で。
ほんとね、お化けとかね、落ち武者とかね、何度見てもいいよ。
1人で中国行くのに比べたら、全然いい。見たい。見せて!是非!
っつーくらい縮み上がりまして、
もうね、観念して電話した。
「行けない」って。
言葉が詰まった。ちょっと泣いた。
したら、友達笑って、「だと思った」つって、
「でも大丈夫」つって、
「遅れて来る人たちもツアーみたいに成田から案内がいるから」って。
「一緒に来ればいいよ」って。
「なぁーんだ!オーケーオーケー」
つって、喜んで電話切って、
もう一回泣きました。
ち が う ん だ よ
行きたくないのー。
もう全然ノリ気じゃないのー。
この孤独感を中国まで抱えて行きたくないんですよ。
やっと「行けない」って言えたのに・・。
で、まぁ当日。
友達から届いた懇切丁寧な しおり を握り締めて家を出た。
ボロボロになるまで読み返した。
「結婚式には呼んで」なんて軽々しく口にした自分を呪った。
でも仕方ない。
生きて帰って来れないかもしれない、という漠然とした不安で、
昨日は眠れなかった。
でも仕方ない。
案内人がいるとは言っても、知らない人たちとの中国。
人見知りなのに寂しがり屋な強面(コワモテ)という三重苦を背負っての一人旅。
空港には、もちろん早く着いた。
持ち物は完璧。
パスポートは持った。
ただ、知らない人たちの中に飛び込むのは怖くて、
ギリギリまでカフェで時間をつぶした。
で、まぁ2分くらい前になって行ったんだけど、
人がいっぱいで、見つからなくて、
先に荷物預けたわけ。
こなれた感じで。
したら、なんかね、受け付けたお姉さんがね、
ん?え?みたいな顔してるの。
で、何か後ろの先輩っぽい人呼んじゃって、
何か起きたっぽい顔をね、してるの。
その時点で、私も何か起こったことを察知して身構えた。
で、お姉さんが、
「お客様。
お客様の飛行機は、今、出発時刻になってまして」
「はい」
「今から手続きをしましても、もう間に合いませんので」
って言うので、
「わかりました。今からダッシュします!」
つったら、
「お客さま!!」
つって、向こうもカウンターから乗り出して腕を掴んできたので、
その必死さに、すげぇヤバさを感じて、
「大丈夫です!荷物も!一緒に持って乗るので!」
って荷物を抱えると、
その荷物までお姉さんに尋常じゃない力で掴まれて、
「もう離陸してしまうので!!」
っつーので、
「本気でっ!本気で走りますから!
ちょっとだけ待っててもらえませんか!」
「無理です!」
その横で、自分の乗るはずの飛行機のパネルがパタパタパタパタってなるの、見たよ。
やばい。
やばいよ。
行けないかもしれないとは思ってたけど、
本当に行けないかもしれない。
私は握り締めてボロボロになった しおり を見せて
「でも、ここに時刻が書いてあって」
「これは出発の時刻なので、この前に書いてある集合時刻までに
来ていただきませんと搭乗手続きができませんので・・・」
ああ・・・そっか。
集合時刻と出発時刻が、あまりに違うから、これはイベントとかの
受付開始時刻みたいなもんで、出発時刻に間に合えばいいんだと思ってた。
でもね、友達が明日には結婚するんです。だから。
「えっと、明日はホントーにホントーに絶対遅刻しないで来るので、
明日乗せてもらえませんか?」
って、真剣に聞いたら、
お姉さんの後ろにいた先輩っぽい人がもっと真剣な顔で、
カウンターから出てきて、飛行機の仕組みみたいなのを
真顔で教えてくれました。ごめんなさい。ほんと。
明日乗せて、とか軽々しく言っちゃって。
で、まぁ、キャンセル待ちの話とかね、次の便で行く方法とかね、
聞いたんですけど、
なんか上海を経由するっぽくて、
経由とかね、それこそ軽はずみに言わないで欲しい。
そんな魔法みたいなこと、とてもできない。
って思ったけど、
何かもう ツウっぽく「あーそれかー、そうきたかー」て
聞いちゃってたら、話はどんどん進んで、
今日、今からキャンセル待ちして乗って、上海で夜を越せ、
そして朝また飛行機に乗って、みたいな
「それ呪文かしら?」って感じの説明になったんで、
いやいやいやいや、ちょっとまって、上海で夜、越しちゃうの?
上海って、あれでしょ?上海といえば、マフィアみたいな方程式なんですけど。
みたいなことを、冗談交じりに言ったら、
なんか当たらずとも遠からずみたいな雰囲気をめっちゃ出してきて、
「危ないから移動はタクシーにしてください。
でもタクシーも危ないから油断しないで。」
みたいな、えーどっち?みたいなコトになって、
つーか、油断の度合いは、もはや関係しないんじゃないかな、
なんて思ってきて、
「わかりました」
つって、気がついたら、家に帰ってきてました。
ほんと油断は一切しなかった。
つーか、家を出てから、まだそんなに経ってないのに、
何!この懐かしさ!
何!この生きて帰れた感!
で、まぁ、友達に電話したところ、
「で?」に続く「で?」の応酬に、
ほんとオシッコとかね、漏れるなら今だ!って感じだったんですけど、
何せ、念願のホームでの戦いなので、耐えました。
価値あるドローに持ち込んだと思います。
そんな友達から、後日、結婚式のビデオが送られてきたんですが、
それはまた、別の話。