ある日ね、目覚めるわけ。
なんだか騒がしいなって思って。
なんだか外が騒がしいなって。
なにやら、ウーウー言ってんなって。
察するにどうやら近所で火災が起きたようで。
これはもう、放っておけないわけですよ。
なんならバケツリレーとか、全然参加するし、
むしろそのバケツの水を奪い取って被ってね、
取り残された赤ん坊とかね、どんどん救いに行くし、
つーか、彼とのデート模様を写メで激写して激写して激写した末に、
「加藤て、写メ使ってる?」って言ったあの娘に、
一泡吹かせるスクープを!私に!どうか!
って願いつつ、写メを握りしめ、部屋のカーテンを開けたんですけどね、
あれ?
結構近め。
スープとかね全然冷めない距離。
なのに、火の手が見えない。
で、思った以上に、窓越しに視線が絡み合う。
消防士と、若干、見つめ合ってる感がある。
携帯持つ手が、ブルっちゃう。
あー、これ、きた。
ついに、きた。
完全に火元サイドでの火事。
1人暮らし歴、5年。
初めての燃えてる側での参戦。
震えた。
しかも、今ね、痛恨の裸。
洗濯をサボったせいで、手元に脱出用のパンツすらない。
パンツは最悪、3連投でもいい。
服は!服はどうする?!
床に落ちてるのはどれも皺くちゃで、でも野次馬はたくさん、女ざかりの20代。
逃げ出す服もなければ、脱出用アウターもない!
唯一、タンスにかかってたクリーニング済みの服を、
迷わず纏って飛び出した。
迷えば良かった。
結婚式用のドレスだった。
この非常時に、明らかに よそ行きで脱出。
完全にお出かけスタイル。漂うお祝いムード。
それでも命からがら懸命な脱出を試みてみたわけだけど、
あれ?案外、注目度低め。
一張羅でアパートを見上げると、
あ、惜しいっ!
火事、うちじゃなかった。
隣の工場だった。
余談ですが、消防士の視線は奪えなかったけど、
警察関係者の視線は割と釘付けでした。
えっと、違うんです、ほんと、今日この後結婚式で、
みたいな雰囲気を前面に出しておきました。
で、まぁ工場は建て直しが必要になったみたいで、
「ご迷惑おかけしました」的な白いタオルがうちのアパートにも
配られたんですが、
これが案外、アンチ洗濯の私には重宝しまして、
したら、なんか、しばらくして今度は、
「工場なんですけど、ちょっと前回より大きめにしようかなって思っててー」的な白いタオルが配られまして、
ほんと、これ、ボロイ商売だぜーっなんつって上機嫌でタオル使ってたんですけど、
最終的に、
「えっと、そこ、うちの敷地になるっぽいよ」的な白いタオルが配られまして、
おめぇ、何でも白タオルで まかり通ると思うなよ。
って思う頃には、管理人の方と、ばっちりまかり通ってたようで、
1人暮らし5年目にして、初めての「引越し」を余儀なくされたのです。
で、まぁ引越しというと、ふと目に付くわけです。
部屋が樹海ってこともさることながら、
もう三年間、そういえば開けてない冷蔵庫があったなってことに。
あいつ・・引越しの時、いい加減、開けたりしなきゃ、ダメなんじゃねぇの?
中のもの、出したりしなきゃ、ダメなんじゃねぇの?
確か、一匹の鯖がいたりしたんじゃねぇの?
って、思って、震えたけど、それは何か、また別の話。