ムーブメント!

あけおめー!


3月です。疑いようもなく明けてます。
完全にうっかり。


いや、これはもしや明けてんじゃないかなと薄々は感じてたけど、
それにしては、まわりが静かすぎると思って。

もっと何かしらパーティー的な感じじゃなかったっけ お正月って?
もっと何か、「ニューイヤー!」とか「ヒュー!」とかの歓声が、
私のまわりを飛び交ったりするんじゃなかったっけ?って。

何なら年が明けた瞬間に、隣にいた人とキッスのひとつやふたつ、
交わしちゃったりしませんでしたっけ?


1月1日、完全に生活音しか しなかった。
ほんと。コンビニのビニール漁る音の臨場感つったら、なかった。


もう、この時点で、明けたかどうだか疑わしい感じで、
むしろ、2007年とかアタシ結構嫌いじゃないし・・、みたいな
幅の広さを垣間見せたりもしたんですけど。

えっと、何かもー こんなことわざわざ言うのもアレなんだけどね、
誰か一人ぐらい、明けたねっつーことを電話してこいっつーの。

何ならメールでいい。
空メールでいい。
手ごたえ感じたい。
2008とか、私も使いたい。


と、いうのも去年ぐらいから愕然と、そして着実に、
年賀状というネットワークから はぐれてきてて、
今年は、もう、限りなくゼロに近い「1」。

去年一回しか行ったことない美容院から一筋の光を見い出しました。
ほんと爆発パーマも かけとくもんですよ。

ね!




そんな怒涛の幕開けですが、1月については、
なんつーか、やはり「激動」と言わざる終えない。

まぁ全てのものがね、動いた。
だいたい動いた。



まずね、沈黙を破って動いたのは、「伝票」。
次に、あわび。

あ、あわびはいいや。えっと。伝票の方。


2008年 年明け初、待ちに待った電話。

ワンコールで取りましたよ。
ほんと、カルタ名人っぽく。

えっと、仕事先からの
「加藤さん、
 注射の伝票が無くなったんだけど、加藤さん知らない?」的な、
前置きなしの軽い疑惑でした。


し、知らね—————!(そして先輩、今年もよろしくー)


つーか、正月早々 断じて知らねー!
見たこともなければ、触ったこともねーぞー!って
懸命に身の潔白を訴えました。
なんなら、出るとこ出てもいい!



いやー、白衣のポッケは盲点でした。
出るとこ出なくて良かった。

翌日、自分の白衣のポッケから変わり果てた伝票の姿を見たとき、
もうね、誰のせいとか誰が悪いとかどうでもいい、無事に戻ってきてくれて良かった!って抱きしめました。
こいつぅー、心配させやがってぇー、もぉー食べちゃいたい!

ほんとね、食べちゃおうかと、思いました。恐ろしくて。
後ろで見てた後輩の視線とかが。



気がついたら、その後輩に「あわびでも食べに行く?」って誘ってました。

ほんと、高いものつったら、あわびしか思い出せなかった。

あわびなんて、食べたこともないのに。

その混乱に乗じて、気がついたら、後輩も何か3人に増えてまして。

さすがに「え、あれ?」つってみた。
A型特有の角を立てない感じで「増えてねぇ?」って疑問を余すとこなくぶつけてみた。

したら「あ、マリちゃん、なんか失恋して落ち込んでて」って。

つーか、失恋は あわび じゃ癒されねぇぞっつーのは100歩譲って、
マリちゃんはいいや、マリちゃんは。
で、えっと、その隣の、あきらかに見たことない人、どなた?



聞けなかった・・・。

一瞬、マリちゃんを気遣ったことによって、
完全にタイミングを逃した。

「大丈夫?」って言う私の横で、
「そうだよ、元気だして」って言ってるこの子、誰?



そんな感じで、後輩2人と他人1人を連れて、小料理屋みたいなとこ行きました。

連れて・・っつーか、「あわびっていったらココだよねー」っていう後輩に連れられて。


ほんと、あからさまに みずほ銀行とか寄ってみたんですけど、
むしろ塩を送った感じになってて、
私が銀行から出てくる頃には「じゃあ食べるぞー」みたいなムードになってました。


で、まぁ、

「えっと、あの伝票はさ、手が空いて手伝ったんだよね。注射をさ。
えっと、伝票をなくしたことはホント私のミスだけど、
ミスの影に「手伝い」っていう思いやりの心があったことをお忘れなく!」

みたいなことをね、言いました。一気に。


ほんと、タイミング間違った。


後輩二人、ほぼメニューに夢中だったからねー。
「あわび>先輩」の図式がバッチリ見えました。

で、なんか、もう1人の子が、「すげぇわかるぅー」って感じで聞いてくれてたけど、
相槌が「そうですよねー。で、先輩ビールでいいですか?」って、ほんと、わかってくれた?
大丈夫?つーか、多分 君の先輩じゃないけど、大丈夫?
明日から「なんか加藤さん、この前、注射伝票なくて大変だったらしいよー」っていう話題には、
間髪いれず「え、でも何か、手伝ってやってあげた注射だったらしいよー」って言ってくれる?大丈夫?
つーか、ビールで。


で、あれよあれよと、注文になって、三人はすげぇ たのみ慣れた感じで「バター焼き」とか言ってっから、私も遅れを取っちゃまずいと思って「あわびの踊り焼き」みたいのオーダーした。

んで、なんか、三人が軽く火を入れた感じのあわびが配られる中、
私だけに一人用の炭火であぶる ちっちゃい網みたいのが用意されて、あわびもすげぇ新鮮、っつーか、明らかにご存命。

コレきた!
あわびは、すげぇでかいし、
何より新鮮で、持ってきた店員の気合も違う感じで、

一瞬ね、周囲も興奮しだし、後輩達も
「それ、すごい美味しそう!」
みたいな羨望のまなざし。
隣の席の客からもヒシヒシ感じる期待感?
「あー、私もそっちにしとけばよかったー」みたいな意見もチラホラ。


えっと、火をつけて、事態は一転しました。


あわびの、思わぬ躍動感?そして臨場感?

このあわび 松田勇作じゃない?っつーくらいの表現力?

貝類って、こんなアクティブでしたっけ?

完全に、苦しんでる様がね、もうね、手に取るように伝わってくるんです。

「あぎゃー」「くっ苦し・・」「・・み、みず・・を」

って声が聞こえてくる気がする。

後輩達もね、一気に神妙な面持ちなんです。
「かわいそ・・」とか小声で言っちゃってるんです。
私のディナーに完全に感情移入しちゃってんです。
バター焼きとか、ちょいちょい つまみながら。

私も、バター焼きにするんだった。
そんなバター焼きに目を奪われてるうちに、


あ、あわび—————!
ちょっと逃げてるー。
貝の部分を置いて、網のハシのほう行こうとしてるー。
必死。
つーか、貝んとこと具の部分は一心一体じゃねぇの?
置いてっちゃっていーの、それ?

私は何食わぬ顔であわびを箸で押さえながら、マリちゃんの失恋話聞きました。


つーか、全然失恋話じゃなかった。
失恋っつーか、告ってすらいなかった、しかも何か両思いっぽい。


「つーかさ、それは脈アリなんじゃん?」

って発言を、私したんですけど、

風を切るように言ったんですけど、

伝票のことはヨロシクね!って気持ちを込めてズバリ言い切ってみたんですけど、


びっくりした。


後輩たち、超テンション上がってたんですけど、
「え、どのへんがですかー!」「ほんとですかー!」
とか言ってたんだけど、

もうほんとごめん、ちょっと黙っててくれる?


えっと、まずあわびがね、完全に焼けたっぽいことをお知らせします。

なんかね、ちょっと見ないあいだに、弱々しくなってるのはいいとして、
なんつーの、あわびの背中、こんなに小さかったっけ・・みたいな。
焼けたせい?なんか一回り小柄になってるんですけど、
でもね、もうね、あわびがどーとか言ってられない動きがあったんですよ。


えっとね、私の向かいの壁がね、
小粋な感じでちょっと反射するようになってて、
自分の顔がね、うっすら見えるようになってんですけど、

「それ脈アリじゃん」つってる時の、私の「じゃん」のタイミングの顔が、

びっくりするほど、しゃくれてたんですよ。
もう何か、事件性を感じるほど。


人生の上り坂と下り坂で言ったら、間違いなく今「まさか」にいます。


いやいやいや、偶然の一致ってこともあるし、
あわびの小ささも、私のしゃくれも見間違いっつーか、
ある意味、スプーンを揺らすとアラ不思議、グニャグニャに見えるー!みたいな
目の錯覚の可能性大って思って、

「だって、好きじゃなきゃそんなことしないじゃん?」

って二度目の「じゃん」に挑戦してみたんですけども、
思う存分しゃくれてました。
アゴ、放物線えがいてた。大人の階段、駆け上がってた。

その後も、後輩の「そのあわび焼けてますよ」って声を無視して、
数打ってみたんですけど、何この揺るがぬ手ごたえ。
この小料理屋、時空歪んでない?ねぇ?
あわびが、ゴムみたいになっちゃったのも、そのせい?

初あわび。
噛み切れない。消しゴムの味。
噛んでる顔も、しゃくれてた。右に だいぶ。


そんな感じに2008年、あらゆるものが右に左に動いた。

で、そんな私自信にも、信じられないオファーが。


夕暮れ、婦長室に呼び出し。

(で、ででで、伝票のことは・・ほんと・・申し訳ないと・・!)

と震える私に、婦長が言った。

「2月から外科に行ってほしいの」



奇跡の外科デビュー!


外科つったら、アレでしょ。
め、メス、あ、汗、とか言うアレでしょ?
斬った張ったの世界でしょ?


不安に震えつつ、家に帰ったら、
1ヶ月前に買った白菜が玄関まで転がってきてた。

びっくりした。

転がってきたことに。
転がれたことに。


1人暮らしじゃ食べきれないから、半分にカットされてる白菜を買ったのに、
知らないうちに育ってて、丸くなってた。一個に戻ってた。

伝票は動いて、
あわびも動いて、
アゴはしゃくれて、
白菜は増えた。

激動の1月をダイジェストでお送りしました。
次回は2月のダイジェストでお会いしましょう。