加藤バガボンド!

私、私の書く文章を読んだ上で私のことをイイって言ってくれる男性がいてくれたとしたら、結婚してしまうかもしれない。


バガボンドの26巻、読んだ?

すげぇから。

最初から最後まで、武蔵が吉岡一門の70人を斬り捨てていく様が延々と描かれています。

ほんと、金太郎飴のように、26巻の最初から最後まで、
70人を1人ずつ切り落としていく様がね、描かれてます。

3分クッキングみたいにね、「はいじゃあこれから70人を切り落としていくわけですね〜。で、こちらに70人を切り落としたものがあるわけですが〜」って冷蔵庫から何らかの、寝かせておいた70人みたいなものがね、出てこないの。

武蔵がね、うりゃー!とか刀を振り上げて、そこで暗転、チュンチュン・・チュンチュン・・とか鳥の声で目覚めたりしないの。


とにかく、斬る、斬る、斬る、斬る。
ほとんど経過の省略無し。

ほんと、丸ごと一巻、斬りっぱなし。


もうね、ばっさばっさ。

ばっさばっさ。

で、だんだん武蔵も疲れてきてさ、
余計なこと考えたり、
相手も段々、死に物狂いになってきて、
大勢で攻めてきたりすんの。
もうね、死闘なの。すごいの。


わかる!

わかるよ!

私、武蔵の気持ち、わかる。


もうね、最近すごいもん。
私の周りも。

ばっさばっさ。
ばっさばっさ。

結婚すんの。


結婚しても、結婚しても、どんどん出てきて、「結婚するの」とか言うの。
同世代が終わったかと思うと、後輩までがちゃっかり「結婚します」とか言うの。
こちらもこちらで、一巻まるごと結婚しっぱなし。

最初は、そういうもんかなぁ〜とか思ってね、ご祝儀も包みました。

でもね、もう、こう次から次へとね、結婚結婚湧き出てくっと、
おめぇら、そうそうご祝儀とかもらえると思うな!
って気になってくる。

余興とか、ほんと、タダでやると思うなよ。
って気になる。

受付と余興やって、その上、お金払ってんの。
お金はらって、友達の一番幸せな姿、見せてもらってんの。

おめでとーとか言ってね、笑顔で金はらってんの。
おめでたいのは、むしろ私じゃない?

どっちかっつーと、こっちが払って欲しい。
あいつ結婚すんのに!
あたし結婚しねぇのに!
老後の金まで、むしり取られて。


なぜ人を斬るのか。
なぜご祝儀を払うのか。

同じ虚しさをね、武蔵も抱えてんじゃないかなぁって。
私こそ現代に生きる武蔵なんじゃないのかなぁって。

ほんと、もうね、この際だから、私が70人の花嫁たち相手にばっさばっさとご祝儀払ってく様子も、井上雄彦 漫画にしてくれないかなぁ。

ご祝儀、出す瞬間の間合いとか、描ききって欲しいなあ。
3万にするか5万にするか、ド迫力の駆け引きなんかも交えてさー。


なんて思いながら、日々剣をふるってたら、
ちゃっかり佐藤が結婚してまして!


日曜日の昼下がりに、
「はいね、死なないで聞いてね。気を確かにね。佐藤が結婚してた!」
って友達からの電話。

私は「オーケーオーケー」言ってたわけですが。
ちっともオーケーじゃねぇ!

佐藤つったら、私、武蔵にとったら、小次郎みたいなもんで。
もうね、10年、大好きで大好きで、目に入れても痛くない。
そんなあの子がね、結婚してたわけです。


うわああああああって思って、バガボンドの最新刊(34巻)を買いに行きました。


34巻。読んだ?

表紙を見てね、驚いた。



その顔ね、私も今、丁度してたよね。

で、まあ、ページを めくれどもめくれども、武蔵と小次郎、全然出会ってなかった。
出会う予兆すらなかった。

そっちも?ってなるよね。

武蔵、わかるよー。
人を斬りながら、自分に剣を突き立てているような心地がする武蔵の気持ちわかるよー。

私だって、70人のご祝儀をばっさばっさと払って、もうね、満身創痍なわけです。
なのに、いまだにチョロチョロとね、70人の仇とばかりに結婚する輩が現れては、ご祝儀ですよ。

早く・・小次郎に会いたい。
早く小次郎と巌流島(ワイハ)で・・式を挙げたい。

なのに、34巻にして、全く会えてない武蔵のように、
32歳にして、全く会えてないわけです。こちらも。
小次郎らしき人影、まるで無し。

10年間、小次郎だと信じてきた佐藤は、ちゃっかり常夏の巌流島(ワイハ)へ。


「疲れた・・地べたまで落ちたな。
 いや・・そうじゃない。戻ったんだ地(つち)に。
 何も持たないという、はじめの姿に」(バガボンド 34巻「♯旅路の果てに」より抜粋)


それでも、私は思うわけ。


同じ天気、同じ言語で、同じ通貨。
月がきれいだって、100年言ってやる。
今日半泣きでコンビニに駆け込んで、バガボンドを買って私が払った千円が、いつか佐藤の買い物のおつりになって、佐藤の手に渡る日もあるかもしれない。

10年好きで、通算5回告白、通算6回振られた。
気持ち多めに振られてる。
結婚されたっつーのに、気が付いたら、バガボンドを読んでた。

それだって、
「天は笑いはしない。ただ微笑んで眺めている。」(バガボンド 34巻「♯あめつち」より抜粋)


って言うから、井上雄彦はやっぱ、私を描くべき。