歌えなかったラブソング

やーほんと、びっくりしました。

この前さー、友達とさーカラオケなんかに行ったっけ、
友達、曲の途中にイキナリ泣き出したわけ。

おいおいおいおい、感情込め過ぎだろ。
今年の新人賞総なめにでもするつもりー。
って思ったら

『これ・・ぅ・・別れた彼と・・ズッ・・よく聴いてた曲で・・』

とのこと。

つーか、マイク通して語ってくるので、

よく聴いてた曲でぅぃんでういんでういん・・みたくなってんのを
聞き逃せない自分との戦いの火ぶたが、勝手にこっちサイドでは
切って落とされたわけだけど。

その後も、

ズッ・・・

ズッ・・


ズッ・・・

ってマイク越しにすげぇエコー醸し出す鼻をすする音が、
もう気になって気になって、

ぜってぇ誰か、この窮地にラーメン食ってるだろっつー音で、

たまに無いと逆に呼吸してないんじゃって心配になるくらいで、

全然、彼女のセンチメンタルに集中できない。


誰か!ポジション的に彼女の近くに座ってる誰か!

とりあえず、マイクオフにしてあげてー!
鼻音が赤裸々にリズム紡いじゃってるよー!
彼女の呼吸回数がばっちり漏洩しているよー!

と、対角線越しにテレパシーを送ってみたんだけど、

隣の子、思いっきり彼女の肩を抱いて、髪を擦って慰めてる。

わぉ。

なんつーの?
その苦しみ、あたしも分かるよ的な、抱擁?

や、私も分かるんだけど。


その抱擁にますます、感極まった彼女の

ウッ・・・(ウッ・・)←エコー

ウェ・・・(ウェ・・ェ・・ェ・・・)←エコー

ズッ・・・(ズッ・・・)←エコー

みたいな泣き声が、マイクを通して、軽いボイスパーカッションみたくなってる。
結構おしゃれ。

(ごめん、正直あんまわかんねぇ。)

わかんねぇどころか、次あたりYOとかHOとかを期待してる自分が見え隠れしてる。

つーか、気づけばこの状況に、胸躍ってるのが、
6人中、あたし、一人!

よくわかんないけど、みんなシンミリしてる。

ユカとか、よくわかんないけど、目つぶってる。

誰か死んだ?



で、気が付いた。


あたし、もしかして、私だけが、
『これ・・ぅ・・別れた彼と・・ズッ・・よく聴いてた曲で・・』
                 (対角線の彼女より引用)
っていう状況に巡り合ったことが・・・無い?

や、ニアミスはしてたよ。ニアミスは。多分。


つーか、カラオケだから、もちろん私、歌う気満々で来たわけだけど、

ふいに訪れた瞑想タイムに、身の振り方に迷う。
誰も次の一語を発せられない、微妙な緊張感。


やべぇ・・

ちょっとトイレに行きたくすらなってきた。


なんて、思ったところで、自分が更なる窮地に追い込まれてることに気が付く。



(あ・・次の曲・・入れたの私だ。)


え・・どうしよう・・歌った方がいい?

歌わない方がいい?

つーか、こんな雰囲気の中、歌う?

いや、でもアタシ歌いに来たわけだし・・

加藤そろそろ18番入れちゃってよー!って言われて入れたやつだし・・

むしろこれ歌ってこそ、この雰囲気を脱するチャンスっつーか・・


と、思って、こっそりマイク(もう一本の方)引き寄せてたわけですが、

イントロ2秒で、消されました。(誰かに・・)


は・・早ぇ・・。
飛ぶ鳥を落とすような勢いあった。


でも危ねぇ危ねぇ。
やっぱ歌っちゃダメだったんだ・・。
って静かに下ろしたマイクが、
机に当たって


ゴッ!・・(ゴ・・・ゴ・・・ゴ・・・*・・・)←エコー

みたくなって、すげぇ白い目浴びました。


やーほんと、びっくりしました。