踊る私

お、おにぎり、食べたいんだな。


って23時に思い立って、

いやー夕飯を抜いちゃおうなんていう暴挙に出たら、
腹が軽い一揆を起こしたヨーホーホー

なんつって財布を片手にヘラヘラしながら、アパートのドアを開けたら、8人くらいの警察官が隣の部屋の人を包囲してまして。


ドア一枚隔てて、超ドラマティックな展開になってた。


もうね、全く予期してない状況なわけで。
若干、会釈しちゃったんですけど。警官に。

つーか、ドア開けたら、モロに警官がいたので。
開けたドアも若干ぶつかってたし。


もう私なんてほんと軽い気持ちでおにぎりに手を染めようとしちゃっただけなわけで。
軽い気持ちで、思いっきり太字で「合点」って書かれてるトレーナー
着て出てきちゃったんですけど。

一個も合点いってない。


でも、なんか人間って不思議なもんで、
完全に捕物帳みたいになってる横を、
軽く会釈しつつ警官をかき分けて普通に出てきちゃったわけで。

ほんと、警官とかも、むしろ会釈返してくっから。


で、なんかコンビニで普通におにぎり買って、
もしかしたらあれは幻だったのかもしれないと思いつつ帰ってきたら、
あはは、むしろ警官の数、ちょっと増えてんの。
廊下、ちょっとはみ出してんの。はみ警。

10人以上の警官で、隣の部屋の人が、
ちょっとした卒業式の金八っぽくなってて、

まあ、さっきよりグッと包囲されてるわけですが。


もーどっからどう見ても有事。どっから見てもKeep Out。

何らかの黄色いテープ張られてもいいくらいなのに、

なんか後ろの方の警官が、すっごい空気が読める人だったみたいで、私を見て、なんか、こう、「後ろ人通るよ!」みたいなゼスチャーをみんなに送ってくれちゃって、
もう事件の真っ只中っぽいのに、微妙に私の部屋まで体を開けてくれちゃって、

私も私で、「あ、じゃあ・・・」みたいな感じになっちゃって、

ほんと、隣の部屋の人と警官は今にも一発触発みたくなってんのに、
なんか私だけおにぎりを持って、ちょっと中腰で、
スクリーンとかの前を横切るみたいにして、
なんか警官と隣人の間を横切ったんだよね。


もうね、廊下が狭いといえども、絶対横切らないポイントをね、
横切りました。合点と。


何この違和感。
そして疎外感。

いや、もう、全然そんな事件とかね、疎外されてていいんですけど、
安全第一なんですけど、

でもなんつーか、もうちょっと・・・もうひと声・・・

「危ないから下がって!」とか、
「今、あちらに行くのは危険です!」とか、
そういう声かけ欲しかった。

もう何そのスッって。スッて どいちゃうって。
一瞬、なんかの事件の重要参考人っぽい人の真ん前 横切っちゃったんですけど。
ほんと、軽く会釈とかしちゃったんですけど。隣人なので。


で、まあ、無事、部屋に入れたわけですが。


もうね、事件が完全に現場で起こってるわけです。
おにぎりとか、多少手荒に袋をむきながら、
玄関のドアに耳を当てて、すっごい聞いてみた。
聞き込んでみた。

でも、思いの外 ドアが分厚くて、なんかよく聞き取れず、
事件の概要が全く掴めないわけで、

ならばと、もー超そっと郵便ポストを開けてみたら、
ずっとクリアな音声を聞くことができまして、

そこで「じゃあ、隣のやつにでも確認してみたらいいだろ!」みたいなお声をねキャッチしました。


はじめまして、ご紹介に預かりました 隣のやつ です。


正直、戦慄が走りました。

神に誓って事件の片棒を担いだ覚えはないので
「確認」だったら任せろ!ってくらいシロなんですけど、
私の心のドアはいつでも開いているわけなんですけどね、

もうね、うちの玄関がね、こう、ちょっと、
割とお手入れとかね、怠ってるっていうか、

しなびたキャベツとかがね、結構ブーツの横に転がってるよなうっていう、まさかのバリアフリーを実現していまして、

あと白骨化した靴下みたいのとかね、全然あって、
まあ、よく言えば遺跡、悪く言っても遺跡、みたいな、もう遺跡なんだよね、玄関が。

なんなら来週あたり不思議発見がうちの玄関に来てもおかしくないなと。

そんな状況でね、わが家の門を警官にたたかれたら、
もうね完全に玄関に事件性があるわけです。

キッチンからベッドルームにかけても、
あれ?昨日あたり軽く泥棒に押し入られた?っていう空間を
完全にデザインできてる。玄関 feat.泥棒。

あと、まあ、このキャベツは風水的にこの位置で。



とか、色んな言い訳を一瞬で考えたんですが、

これね、目撃されたら、私も軽く警察と金八っちゃう可能性ない?って思いまして、
もーすっごい勢いで掃除した。

まあ、目に映るもの全てをゴミ袋に入れて隠す大作戦なんですけど。

ほんと、とりあえず、ブーツもキャベツもドライヤーも醤油も老いも若きもゴミ袋につめて隠して、

あと、まあ、8年くらい前に買ったスーツをね着まして、
さぁ来い!つって待ち構えたわけですがね、

ほんともう、気づいた時には、すっかり廊下に誰もいなかったよね。

いや、まあ、スーツにねアイロンかけてるあたりでね、
遠のいていくサイレンがね聞こえてたみたいなとこありましたけどね、
もうね、自分を止められなかった。

で、せっかく着替えたから、もう一回、おにぎり買いに行ったんですけど。

さっきのおにぎりは、なんか、食べた気しなかったし。


なんつってやってたら、深夜の3時くらいに寝たから、
もうすっかり寝過して、

やべー、仕事ー、
やべー、今日ゴミの日ー、

つって、オートマチックに大量のゴミ袋を捨てたら、

まあ、家具半分くらい、なくなっちゃったわけで。なう。